X線発生原理について

1.X線とは…

1895年、ドイツの物理学者ヴィルヘルム・コンラート・レントゲンにより発見された非常に波長の短い電磁波の一種で、波長は1pm~10nmの範囲にあります。

波長

X線には以下の性質があります。

  • 波長が短いので物質に対し透過性が高い。物質は密度が高く、厚みがあるものほど透過しにくい。
  • 直線的に進み、磁界、電界による影響を受けない。
  • 5感で感じることができない。
  • 原子から電子をはぎ取る(電離する)性質がある。

X線は放射線の一種で一度に大量に浴びると、ガンを発症させたりときには死に至らしめる危険性があります。CT撮影に置いてもX線を使用するため、被爆量に関しては大変シビアになっています。撮影の仕方にもよりますが、胸部撮影で0.1mSv、胃透視で15mSv、CT検査で20mSvとなっています。通常に生活していても大地や宇宙からの放射線で一年間に2.4mSvの放射線を浴びています。さらに成田からNYまで飛行機に乗るだけで0.1mSvの放射線を浴びることになり、年数回の検査では体への影響は心配する必要はなさそうです。ちなみに一度に1000mSvを超える放射線を浴びると白血病やガンになる可能性があるようです。徐々に浴びる分にはあまり体への害を考える必要はなさそうですが、一度に大量に浴びるようなことはさけなければならないようです。

 2.X線発生原理について

下の図のようなX線管では陽極のターゲットに陰極のフィラメントから発生した電子を衝突させることでX線を発生させています。X線管は真空管の一種です。

x-ray tube

この時、陰極には数十~数百kVの高電圧がかけられます。陰極から発生した電子が高電圧下で加速され、タングステン等の重金属でできたターゲットに衝突することで、X線が発生しています。X線発生効率は非常に低く、電子の運動エネルギーの99%は熱エネルギーに変わりターゲットを加熱していると言われています。この時ターゲットは1000℃程度まで熱せられていて熱膨張により形状が変形していることが考えられています。

3.光電効果とコンプトン散乱について

X線の吸収は光電効果コンプトン散乱によって起こります。X線のエネルギーが小さいときは主に光電効果が起き、エネルギーが大きくなるに従ってコンプトン散乱が起きます。

光電効果

X線がそのまま物体に吸収され、代わりに物質から電子が放出される現象。光電効果が発生する確率は物体の原子番号が大きくなるほど高くなります。これは原子番号が増えるに従って電子の数もふえるため、光電効果が起きる確率が高くなります。

コンプトン散乱

短波長(エネルギーの大きい)のX線が比較的に原子番号の小さい原子に衝突した場合に波長が増加(エネルギーを失う)してX線が放出される現象。具体的にはX線のエネルギーが電子の結合エネルギーよりもずっと大きい場合に軌道電子をはねとばし、自らはそのときにぶつかったエネルギーを失って運動の向きを変える現象。

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「放射線と物質との相互作用」

「Wikipedia 放射線」

「X線(エックス線)による光電効果の発生確率と物質の原子番号との関係」

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